(公演HPはこちら)
この公演、小笠原早紀さんが出演されるということで、
「小笠原さん初舞台!?観ねば!」という感じで軽い気持ちでチケットを取ったんですよ。最初は。
小笠原さんが出演されるレシオチームの公演を2回。
12/22 19:00~と12/29 13:00~の回ですね。
ですが、詳細は後述しますが、結局小笠原さんが出演しない28日19時~の回もチケットを取り、計3回観劇してきました。
もうこの舞台がね、すごいの。すごい。
戦争がテーマの作品なのですが、あらゆる面で刺さりました。
推しを見に行ったつもりが、舞台に完全に魅せられて、今この文章を書き殴っています。
以下公式のあらすじです。
蒸気の魔女エイダ博士の失踪から一年、世界最大の蒸気機関Wells(ウェルズ)を持つアウルム帝国はメタレイア合衆国との戦争を続けており、国民は疲弊する一方であった。感想ですが、アウルム帝国・メタレイア合衆国・そしてレジスタンス魔女の弟子。この3つの立場それぞれに正義があるんですよ。120分の舞台なのですが、その中でそれぞれの立場の人物の心境や葛藤がしっかりと描写されており、基本的には主人公となる魔女の弟子メンバーを応援したいところなのですがアウルム帝国軍の兵士にも戦いに迷う者が居たりして、非常にドラマ性が高かったです。
そんな中、エイダとカミーリャは帝国軍の持つWellsを破壊するべくレジスタンス“魔女の弟子”を結成し、やがて帝国軍とメタレイア軍との三つ巴の戦いに巻き込まれていく。
新たに魔女の弟子のメンバーとなったアルバとステラ。二人は戦いの中、自らの運命と向き合い明日を切り拓いていく。
“我々は、全ての戦争に宣戦布告する”
登場人物にステラとアルバという二人の女の子がいるのですが、この二人は孤児院で共に過ごしていた子供たちをアウルム帝国に皆殺しにされたことがきっかけでレジスタンスに加入するのですが、二人の対照的な姿がとても印象的でした。
アルバは帝国軍に強い憤りを覚えており、「先に武器を取ったのはあっちだ」と帝国に復讐を遂げることで戦争を終わらせようとする子なのですが、ステラは「人は必ず分かり合える」というスタイルで元来争いを好まない子なんですね。そのため劇中でも何度も衝突します。
レジスタンスに加入することとなった直接的な原因は同じなのに、価値観によってこんなに受け止め方が変わるんだなぁと。恐らく、アルバもステラも自分が本当に正しいとは思っていなくて、でも本当に正しいことが何なのかは分かることはなくて、自分の信念に従って生きていたと思うのですよね。
というのも、魔女の弟子メンバーにはアウルム帝国の技術部から翻ったカミーリャという子がおり、アルバが「私もカミーリャみたいに……」と言いかけるシーンがあったのです。
カミーリャは帝国のやり方に疑問を持ちエイダと共にレジスタンスを結成したのですが、アルバの目には気丈に振舞うカミーリャが「迷い無く自分の芯を強く持っている人」に見えたのでしょうか。最高ですね。
一方、アウルム帝国側にも争いの理由が分からなくなる兵士がおり、彼――レグルスはレジスタンス達との戦闘で負傷し仲間に見捨てられてしまうのですが、通りがかった娼婦ヴィオラに助けられ、担ぎ込まれた場所で同じくかくまわれていたレジスタンス一味と邂逅します。
夜、目が覚めたレグルスの傍にはステラとアルバが見張りとしてついており、アルバは帝国軍であるレグルスを殺そうとするのですが、ステラが止め、「あなたには大切な人がいる?」と問い、アルバとステラの生い立ちをレグルスに話します。ステラと会話をするうちにレグルスは「自分が正しいことをしたい」と心境の変化を感じ、帝国軍を抜けレジスタンスへ加入します。
しかし、レジスタンスとして帝国と戦う中で、レグルスは親友だったアグリオと戦場で再開します。
アグリオはレグルスのことを「本当の友達だと思っていた」「なぜ話してくれなかった」とレグルスを責めます。そこにステラが現れ、アグリオのことも説得しようとするのですが、それが叶うことはなく、ステラに襲い掛かろうとするアグリオをアルバが撃ち抜きます。
とここまで書いていて目が潤んでいるのですが、本当にドラマ性が高いんですよ。エモい。
レグルスVSアグリオの直前では、アウルム帝国軍内の会話シーンでレグルスとアグリオがいちゃつくシーンがある(かわいい)のですが、それを見ているのでなおさらアグリオの言葉が刺さる。泣けますよこれは。
実はレグルスが負傷した戦闘の後で、アグリオが上長であるロランド大尉に「レグルスの捜索に行かせてください」と懇願し、ロランド大尉が「ダメだ」「話は終わりだ」シーンがあるのですが、これもまた刺さる。ロランド大尉は戦闘前夜(?)に寝付けないというレグルスと会話をし、「軍人に情は不要だ」「戦いに慣れなかった者から死んでいった」という会話をしていたんですよね。
なのに、アグリオに対して「話は終わりだ」という時のロランド大尉の語調が悔しそうだったんですね。ああ、この人も情を捨てきれていないのかな、と感じた瞬間でした。
また、最終決戦ですが……。
最終決戦では大将ザグレブにやられそうになったアルバをかばってステラが刺されます。それをみたレグルスは激昂し、ザグレブに向かっていきます。
ここのレグルスが本当に勇敢で……もうボロ泣きですよね。自分を変えてくれた子がかつて所属していた帝国軍の大将にやられて穏やかでいられるはずがない。
戦いの後、意識が朦朧とするステラはアルバの腕の中で「どうして大切なものは失ってから気づくんだろう」「アルバ、ありがとう……大好き」と言い息絶え、舞台は終演を迎えます。
この流れに書ききれないことが沢山あるのですが、本当に良かったんですよこの公演。
アウルム帝国の諜報部キーラ中尉の不敵な微笑みは痺れました。銃を構えるポーズとかめちゃくちゃさまになってましたね。カミーリャとの確執や無念な最期など見せ場も沢山あり……。
敵として対したカミーリャに対してある種の嬉しさを感じたような感じで「あなた、軍を抜けてからの方が銃の扱いが上手くなったんじゃない?」と言い放つシーンは最高でしたね。
また、カミーリャに対して「変わったのね」というシーンが2回あるのですが、全く違う状況で同じセリフを言う展開が最高に好みなのでそれもまたキーラ中尉の魅力を引き立てていると思いました。
あとはクリスティ補佐官が皇帝を殺した後、部下が持ってきた包布でナイフの血を拭き取るのかと思いきや自分の手を拭くところとか、メタレイア合衆国のメンバーIRISのアリサ、レオノア、クロシュの立ち振る舞いがやたらサイコチックだったり、でもカッコよかったり、部下が思わず引いてしまうほどの野望を抱いたヴェイロンなど、とても魅力的なキャラクターが多い最高な舞台でした。前作を観ていない(今作で知った)ことが本当に悔やまれる……!
ということで22日に本当に圧倒されまして、その日の夜のうちに28日の公演も追加で申し込みました。
で28日に2回目の観劇をしたわけですが、2回目ならではの発見があるわけですよ。
OPの内容がしっかりドラマ仕立てになってるんですね。これはすごいですよ、リピートした人を泣かせに来ている。
あと殺陣の臨場感がすさまじく、2回目でも全く飽きないどころか、あまりに目移りしたので2回ですら全体を見ることが叶いませんでした(最高)。
あと……クレイグ中将、怪しさを振り撒きまくって退場しましたけど、次回作絶対ありますよね?楽しみにしています。
で29日の回で大千秋楽を迎え、記憶が残っているうちに感想を書かねば!と思い帰り道にカフェに駆け込んでこのブログを書いているわけですが、トリプルカーテンコールで脚本を書いた浮谷さんからのコメントを聞くことができたことを思い出しました。「戦争のテーマでハッピーエンドにしたくなかった」という言葉、まさしくそうだなぁと。戦争の是非ではなく。
今回ステラが戦死してしまうという終わり方をしたわけですが、このエンディングを私は「世界は綺麗ごとだけですべてが解決できるようにはできていない」という主張が込められていると受け止めました。
誰もが正義を持っていて、その正義に上下関係や強弱があるわけはなくて、そこにあるのは信念で。それがぶつかり合うこととなった時に、平和的に解決できることって稀なんじゃないかな、と私は常々思っているんですよね。特に、強い信念を持った者同士がぶつかった場合、誰も傷付かずに終わることってなくて、その傾向は視点がミクロになっていくに従って強くなっていくんじゃないかなって。
(まぁこれは二か月前に恋人と別れて傷が癒えていないだけなのでより強く感じているだけなのかも知れませんが)
作中でも「誰も傷付かない方法なんてない」というようなセリフがありました。だから、この舞台がそんな自分の価値観ととても近いものを以って作られたのだとしたら嬉しいなと思っていて、浮谷さんのコメントがまさにそれを裏付けるような解釈ができるコメントで、とても嬉しく感じました。
(もし真意が違っていたら見当違いですが、私はそう解釈しました)
なので、この公演は私の価値観を再認識することができたものであり、ここ数か月凹みっぱなしだった気持ちを励ましてくれ、立ち直る力になってくれるものとなりました。
年末のこの時期に、このような素晴らしい舞台を観ることができて本当によかったです。年が越せそうです。
ありがとうございました。