「ひらいて」や「生のみ生のままで」等の作品で知られる綿矢りさ先生の「激しく煌めく短い命」を読み心を揺さぶられ、短文SNSでは感想を書ききれないと思ったのでこちらに感想を残しておくことにした
作品紹介
「激しく煌めく短い命」は二部構成となっており、第一部は50章、第二部は21章の全71章で書かれた女性同士の関係を描いた長編小説
第一部は13歳編として主人公「久乃」と「綸」の出会いと別れが描かれ、章の結びにたびたび出てくる比喩表現が特徴的。そこから想起される心理描写はとにかく繊細かつ絶妙で、切なさや期待感、不安などを高い解像度でかき立ててくる
久乃も綸も中学1年にしては大人びた考え方をしているが、この作品の核となるテーマである差別等に関する道徳観や男子との交流等からは年齢相応の幼さもみることができ、それが第一部の終盤で発生するトラブルに対する向き合い方やままならない結末に向うか危うさに繋がっていく
第二部は32歳編として、第一部から20年経過し様々な人生経験を重ねた二人が再会するところから物語が始まる。20年という時間はあまりにも長く、久乃は積極的に枕営業をして成績上位を取る歪んだ仕事人間に、綸は結婚願望の薄い彼氏に依存して擦れた性格となっており復縁は絶望的。久乃が起こした行動で二人の関係が再び動き出すが全てが上手くいくほど現実は甘くなく……といった内容
感想
第一部では二人が互いを大切に思うようになるまで、そして付き合い始めた後の仲睦まじい関係が濃厚に描写されており幸せな気持ちになれました。第一部の最後で別れが来ますが、この時点では明確な決別をするような発言は無かったので第二部での復縁に期待できるような終わり方でこの時点でかなり満足度と幸福度が高まりました。やはり綿矢りさ先生は天才
一転、第二部になるとまず久乃と綸の豹変ぶりに衝撃を受け、ここからどうやって復縁するんだ……?もしやこのタイトルは破滅エンドか……!?と疑心暗鬼になりながら読み進めることに。第一部にあったような章結びのエモーショナルな比喩表現は減り、焦燥感が煽られるような気持ちになるも、成長した二人の新たな関係性は危うさの中に中学生時代の絆も垣間見え、そのバランスの取り方がまた絶妙。やはり綿矢りさ先生は天才
いつ全てが崩壊してもおかしくないような事件が起き続けるので、最後の最後までページをめくる手が止まらず一気に読破してしまいました。結末についてはネタバレになるので割愛。これは読んでほしい!
今作は家庭問題・差別・いじめ・異性愛・同性愛・職場環境・浮気・不倫・妊娠など人間関係にまつわる問題が生々しく降りかかる物語で、帯に書いてある「集大成的恋愛小説」に嘘はないと感じました。かなり重いお話のため人を選ぶ内容であり、面白かった!とかエモかった!等の言葉で感想がまとめられず、とにかくものすごいお話を読んだ……!という思いでこの文章を書いています。心に残るシーンや言葉も多く、百合好きに限らず色々な人に読んでほしい小説でした